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ファッション業界の最前線で活躍するトップクリエイターの方々にインタビュー

森永邦彦 Vol.4

PROFILE

森永邦彦 (もりながくにひこ)
森永邦彦氏に聞いた20の質問

1980年 東京都国立市に生まれる
1998年 代々木ゼミナールにて英語講師・西谷昇二氏の授業で神田恵介を知る
1999年 神田と同じ早稲田大学社会科学部に入学。
      京王井の頭線内でのファッションショーに衝撃を受け、服づくりを始める
2000年 ANREALAGEを開始
2002年 青山円形劇場でファッションショーを行う
2003年 早稲田大学社会科学部、バンタン研究所を卒業。
同年、ANREALAGEを会社化する
2005年 東京コレクションに参加
2011年 東京原宿に直営店をオープン
2014年 2015 S/S パリコレクションに進出。TBS番組『情熱大陸』出演
 

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15年春夏からついにパリコレ進出。
パリの観衆の喝采を浴びる。

「いつかはパリコレ」という思いがあった。ブランドを立ち上げてから12年、アンリアレイジは「さらに一歩進むため」、15年春夏コレクションから発表の場をパリに移す。パリ進出初回のテーマは「影」。特殊な染料で服を染めることで、光が当たった部分のみ黒色に色が変わる服で勝負した。初参加のブランドとしては異例の公式スケジュールを獲得したことでも話題となる。

 パリコレの一番の魅力は、世界中のバイヤーやジャーナリストたちに見てもらえること。つまりビジネスチャンスの多さです。このチャンスをつかむには正式にコレクションに組み込んでもらう必要がある。最初から自分たちは公式スケジュールでやりたいとパリコレ協会に打診したところ、「初参加のブランドは非公式スケジュールで3回ぐらいやって、人が集まるようになったら公式スケジュールでやる権利をもらうんだ」と。でも彼らは「ブランド次第だ」とも言った。パリ進出を決めてから本番まで半年。タイトなスケジュールでしたが、過去12年分の自分たちの「ベスト盤」をトランクに詰めて、アンリアレイジと共に世界で戦ってくれるセールスエージェントとプレスエージェントを見つけるためにパリのショールームとPR会社を回りました。言語や文化が違ってもファッション好きなら何か感じてくれるだろうと信じて。どちらも5、6社回りましたが、熱意をもって「ぜひ扱いたい」と言ってくれた会社と組むことができ、海外でのブランドとしての基礎を固めました。その上でもう一度、パリコレ協会に会いに行くと、最終的には「すごく面白いし、今のパリにはないタイプだ」と評価してもらうことができ、公式スケジュールの参加を手に入れることができました。
 僕たちは、初のパリコレをしっかり丁寧にブランドを伝える場にしたいと思っていました。ショーの15分間だけで、すべてを判断されるような〝賭け〞はしたくなかった。そこで作戦を練りました。ショーに合わせて、パリの有力なショップ「レクレルール」で展覧会を開催し、東京で活動してきた12年分の作品を並べる。そして、ショー初日の夜はそこでパーティを開き、詳細な資料で「日常と非日常」を様々な手法で表現しているブランドであるということをしっかりプレゼンテーション。そうやって、ブランドを深く理解してもらえるようにしました。
 パリコレ初回のテーマは「SHADOW(邦題:光)」。白い服が光に当たると黒くなり、手で光を遮ると服に手の跡が残る、という演出をしました。これもある意味、東京でやってきた10年の集大成。実は初めて参加した東京コレクションも、「影」の表現を試みた作品だったんです。手法は変わっても表現したいことはずっと同じ。それぐらい特別なテーマで臨んだショーの後に、拍手を聞いたときは本当に感動しました。

さらなる海外展開を視野に本格始動を始めたアンリアレイジ。森永氏が描く戦略とビジョンとは? 次回、最終回です。

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