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- 肖像 津村耕佑 Vol.5
ファッション業界の最前線で活躍するトップクリエイターの方々にインタビュー

津村耕佑 (ツムラコウスケ)
津村耕佑氏に聞いた20の質問
1959年 埼玉県行田市に、妹2人の3人兄弟の長男として生まれる
1978年 埼玉県立深谷商業高校を卒業後、東京デザイナーズ学院に入学
1983年 三宅デザイン事務所に入社し、クリエイションスタッフとなる
1992年 造形作家としても活動。個展「Regard de Meduse」(青山スパイラル)
1994年 自身のファッションブランド『KOSUKE TSUMURA』 『FINAL HOME』をスタート。パリコレクションに初参加
1997年 ロンドンファッションウィークに初参加
2000年 展覧会「ヴェネツィア・ビンナーレ第7回建築展」(イタリア)
2005年 展覧会「愛・地球博ファッションショー」(愛知)
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これからの服づくりに求められるのは、
単なるデザイン力ではなく、空間で立体を想像する力
2015年、津村はFINAL HOMEのビジネス終了に伴い、エイネットから独立した。以降、フリーデザイナーとして、展覧会やワークショップなど、ファッションデザインだけでなく、長年続けてきた造形活動にも力を入れている。一方、08年からは、武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科教授として、後進のクリエイターを支援する活動も始めている。
武蔵野美術大学では、ファッションに特化したものづくりを教えるのではなく、建築、インテリア、グラフィック、ファインアートなど、ファッションと異なる分野とファッションをミックスさせながら、新たなクリエイティブ領域・文化を創り上げる人材を育てることを目指しています。
また、話をファッションに限れば、アパレル産業の構造や縫製技術の垣根を越えて、もっと簡単に、例えば3Dプリンターを使って、生成プラスチックで服づくりができるようになるかもしれない。そうなると、従来のパターンメイキングの造形表現力ではなく、空間上で立体を想像する力が必要とされるようになるでしょう。デザインの学び方が根本から変わっていくわけです。そういった意味で、ファッション業界および産業の転換期の到来は、そう遠くないという予感がしています。
現在、私はフリーデザイナーとなり、来年、青山スパイラルガーデンで個展を開催する予定です。これは新しいコンセプトの服の提案で、トレンド優先の市場への挑戦でもあります。フリーの立場だからこそできる、こうした、今の自分にしかできない活動を今後も大切にしていきたい。セルドレスのようなパズルのバリエーションを膨らませていき、その考え方を広めていく活動にも力を入れています。すでに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを取得し、パズルを一般公開して再利用を許可しています。これは、一つのデザインをデザイナーの元だけに留めるのではなく、「クリエイティブをみんなで共有し、さらに新たなものを生み出そう」という意思表示です。
オンエアーの服も、素材やパターンラインの変化によって、思いもよらない形が生まれる可能性があり、さらに進化させたいと思っています。また、現在商標は使えませんが、FINAL HOMEの考え方は、発案者である私がこれからも展開していく責任があると思っているので、様々な機会をチャンスと捉え、新たな提案をしていこうと思います。そもそもFINAL HOMEは、ものを携帯するコート、つまり着るバッグでしょ。例えばそのコンセプトを逆転させて発展させた、新しいバッグなども提案していきたいですね(笑)。