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ファッション業界をリードする企業・ブランドの方々にインタビュー

TOKYO BASE
  • 「圧倒的な商品愛」と「強い接客力・営業力」が支える
    進化するTOKYO BASEのECサイト

  • PROFILE

    TOKYO BASE
    東京のファッションクリエイター、ブランドに特化したセレクトショップから始まり、現在では日本発のファッションスタイルを世界へ発信。「日本発を世界へ」をコンセプトに、「STUDIOUS」「UNITED TOKYO」「PUBLIC TOKYO」の3ブランドを展開。 TOKYO BASE【 エメル リファインズ 】

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  • 自社ECの拡大で「EC売上500億」目指す

    「日本発を世界へ」をコンセプトに、「STUDIOUS」「UNITED TOKYO」「PUBLIC TOKYO」の3ブランドを展開するTOKYO BASE。創業以来、店舗スタッフの営業力を武器としてきた同社だが、現在の中期経営計画では「売上1000億・EC売上500億」と、ECの比率を高めるシフトを打ち出している。この数字をどのような戦略で実現するのか。大きな方向性は、自社が運営するECサイトでの売上拡大だ。同社のEC事業強化にあたる尾浦聡信氏は、次のように語る。

    「EC戦略といっても、これまではEC売上の大部分をZOZOTOWNに頼っていました。一方の自社ECサイトは店舗に通ってくださるお客様が『カタログを見る』という感覚で見ていて、店舗の補助的な役割でしかなかった。しかしこれから会社を大きく成長させようというとき、ZOZOTOWNにはZOZOTOWNの成長戦略があり、TOKYO BASEに歩調や方向性を合わせてくれるわけではない。だから自社ECを伸ばしていこうという発想になるわけです。また顧客のデータベースを自分たちの手元で管理できるのも自社ECの大きなメリットです。CRMなどを実践してお客様との関係性をより深めていこうと思うと、やはり自社ECが必須なんです」

    具体的には、どのように自社ECを拡大していくのか。これまで店舗の補助的な役割でしかなかった分、UI・UXには改善の余地が多分に残る。「でもそこを改善したからといって僕らの強みにはならない。普通のECになる、というだけなので」と尾浦氏。

    そこでキーとなるのが、店舗とECの融合だ。TOKYO BASEの店舗は全国に58店舗。他社に比べるとそう多くはない。「そのせいで、ファンになってくれたお客様が再来店するのも、なかなか難しい部分がありました。これからは、会員登録していただいたお客様に自社ECをご案内していきたい」

    「店舗スタッフの営業力」をECに活用するもくろみもある。

    「接客力・営業力は、当社最大の強みです。これをこれからのECで、より活用していきたいと考えています。例えばオンライン接客ですね。すでに大手アパレル各社がオンライン接客を導入していますが、まだそこまで『本気』ではないように思います。しかし当社は本気で取り組んでいますし、実績も経験値も高い。最新の技術やツールを掛け合わせれば他社とは大きく違うものになるはずです。」

    2020年は、奇しくも新型コロナ禍が「店舗とECの融合」を加速させた面もある。

    「緊急事態宣言で店舗営業ができなかった時期、販売スタッフはお客様一人ひとりに連絡を差し上げ、新作の入荷を報告したり、自社ECにご案内したりしていたんですね。以前はどうしても、店舗で目の前のお客様に服を販売することが最優先でした。でも新型コロナ禍を経て販売スタッフ自身が『お店に来てもらわなくても、ECで接客・販売できる』『ECは武器だ』と気づいた。これは大きな変化でした」

    機能追求とブランディングのバランス感覚

    自社ECは、商品売上はもちろんのこと、ブランドイメージの構築にも大きく寄与する。ECサイトとしての買いやすさ・使いやすさといった機能面とブランドイメージの両立には、高度なバランス感覚が問われる。

    「当社の自社ECはイメージ管理が徹底されています。コンバージョンをあげたければ日本人モデルでのスタイリングのほうが圧倒的に効果があるのは常識となっていますが、TOKYO BASEでは外国人モデルを起用しているのもその一貫。外国人モデルのスタイリングに憧れるお客様=見た目に対する向上心を持っているお客様だと考えているからです。そうした『半歩上』の感覚を提案できるよう、バナー1つとっても、非常に繊細なコントロールをしています」

    「PUBLIC TOKYO」のEC運用を担当する旭恭平氏も、これには同意する。

    「『こっちのほうが売れる』という選択肢があったとしても、同時に『ブランドイメージを伝える』意味ではどうか、を考えないといけない。そのバランスは、いつも心がけています。それは私だけではなく、チーム皆が同じです。私はマネジャー代理という立場ですが、ブランドに関わるチーム全員が、上から言われるまでもなく、意識を共有している部分だと思います」

    「商品愛」がTOKYO BASEらしさをつくる

    尾浦氏はこれまで大手アパレル会社などでファッションECを複数経験してきた。その目に、TOKYO BASEの個性はどう映っているのだろう。

    「TOKYO BASEの魅力は、なんといってもスタッフの『圧倒的な商品愛』です。TOKYO BASEのECの商品説明文を見てもらえばわかりますが、説明の文章がべらぼうに長い(笑)。他社のECではなかなかそんな長文は見られません。これは、当社のEC担当がEC運用だけでなく、商品開発やマーチャンダイジングから携わっているからなんですね。ECで売上を伸ばすための売上責任も担います。さらにEC運用のための撮影の手配もするし、説明文も外注せずに自分で書く。商品のことを知り尽くしているので、語ることがいくらでもあるんですよ」

    尾浦氏が考える「よいEC」も、まず商品ありきだ。

    「ECはもはやシステムでは差別化ができない。大切なのは『商品で売り上げをあげる』という意識だと思っています。大きなプロモーションをする、値引きをするといったカードもありますが、基本は魅力的な商品ありきです。魅力的な商品があるからこそ、それがお客様に伝わるし、売り上げにつながる。当社はその意識が高い。これも創業以来の文化、DNAだと思います」

    次のブレイクスルーは「海外展開」

    足元ではEC運営の業務改善も進んでいる。業務の自動化、標準化は、尾浦氏がTOKYO BASEに転職してきて以来のミッションだ。それまで同社はブランドごとにEC部隊が置かれ、それぞれが縦割りで運営されていた。これに横串を刺すかたちで、EC全体の成長戦略を示しつつ、業務フローの効率化・標準化を行う。

    「TOKYO BASEは平均年齢が若い会社。ですから若いスタッフは、仕事が楽しいからといって際限なく仕事をしてしまう。でも優秀な人材に長く働いてもらうためには、自動化できるところは自動化しないと。私が転職してきて最初に出した方針は『マネジャーを暇にしましょう』。それまで当社のマネジャーはモデル手配から撮影から『何でも自分でできる人』でした。でも本来マネジャーの役割は業務管理。それ以外はスタッフに任せるべき仕事であり、自分がやらなくてもいい。そういった役割と業務の整理も同時に進めています」

     EC売り上げ500億円を達成するため、今後は「国」の枠も超えていく。

    「海外展開は次のブレイクスルーのカギです。幸い、当社の『日本発を世界へ』というブランドコンセプトは非常にわかりやすい。どの国で展開するかは先の話ですが、まずはこのコンセプトを広く世界に問いかけたい。そう遠くない未来に、スタートを切れる予定です」

    [PROFILE]
    EC強化プロジェクト プロジェクトマネージャー
    尾浦聡信(右)
    複数のEC企業を経て、2020年4月にTOKYO BASE入社。同社の3ブランドのEC運営を横串で統括、業務の標準化・自動化を進めながら、成長戦略を描く。

    PUBLIC TOKYO MENS EC事業部
    旭 恭平(左)
    2019年新卒入社。半年、店頭での販売スタッフを経て、EC事業部に異動。現在は「PUBLIC TOKYO」のMENS担当マネジャー代理として、自社ECとZOZOTOWNの運営を担う。数値管理や販促、撮影掲載など、幅広い業務に携わる。